21.1.9

前編からの続きです。

イントロダクション<後編・用語の理解>でも解説しているように、抑圧された感情は内攻化(アクティング・イン)することで、自分自身に向かい、頭痛や腰痛などの慢性化した体の不調から、命に関わる成人病などの深刻な症状、外的な理由としか思えない交通事故など、自分自身を痛めつける体験を引き起こすというのは、心理の世界においてはよく知られた事実です。この事実は、頭で理解するだけでは、「ああ、なるほど」という知識でしかないのですが、実際にセラピーや瞑想で自分が意識的にそれを知ると、人生がひっくり返ってしまうような衝撃を受けます。そして、確かにこの衝撃体験こそが、セラピーの1つの醍醐味的頂点であり、その極みにタッチすることなく、サバイバーが癒しを体験することは難しいのです。日常の小さな気づきは大切ですが、この極みに到達するための積み上げだと言ってもいいくらいです。

【前編無料】イントロダクション〜心の世界の基本地図<前編・10の約束>&<後編・用語の理解>

慢性的な頭痛

月に1回ほど、ひどい時は2週おきくらいに、1日寝込んでしまう頭痛は、明らかに私の日常を狂わせるものでした。カイロ、整体、鍼、ヨガ、グルテンフリーの食事法、あらゆることを試してきましたが、一時的な回復はあるものの、根本的な解決になっていないのは明らかでした。

グルテンフリーは私にとてもよく効いて、今でも継続してます。小麦をやめて3、4日ほど経った頃に、頭の中が怖いくらいにクリアになった体験は忘れられません。今では、外食や頂き物など、状況に応じて微量の小麦は摂取しますが、積極的にグルテンを摂取する生活はしていません。グルテンフリーは、頭痛だけではなく、それ以外の私の身体の不調にも、とてもいい効果をもたらしてくれました。

ただ、そうであっても、完璧に頭痛が治ったわけではありませんでした。やはり、定期的にやってくる頭痛は、毎回、突然、昼頃からスタートして、夕方にはひどくなり、家事もできないほどで、夜は激しい痛みで、目を開けることもできず、早めにベッドに入るしかありませんでした。

痛みは翌朝になっても治らず、動けないほどで、その日の夕方頃になると、徐々に収まりだし、夜になると今度は過覚醒のように冴えてくる。

これが、私のおきまりの頭痛パターンでした。

そして、このパターン化した頭痛をどうしたらいいのか、頭を悩ませながら、私は約3年ほど、真剣に頭痛改善に取り組み、頭痛を克服しました。

頭の中に流れ込む煙

頭痛改善に取り組む前のこと、今から8年ほど前でしょうか。自分が突然、別人になったかのように、イライラしてしまうことを発見しました。

さっきまで散らかっていた部屋でもOKだったのに、次の瞬間、そのことがとてつもなく嫌になって、子どもを叱ってしまう。

もちろん、散らかった部屋を片付けるよう叱るのは、親の当然の躾という人もいるかもしれませんが、子どもたちに冷静に伝えるのではなく、抑えきれないイライラをぶつけるのは、全く良い叱り方とは言えませんでした。

また、私が気になったのは、そんな時に、自分の頭の中がぼーっとして、まるで、霧の中に入ってしまうような症状でした。

頭の中に煙が充満して、感覚がぼんやりしてしまう。

なのに、イライラは激しくなる。

この違和感に気がついたことが、私にとって、とても大きな意味を持ちました。

そんなある日、リビングルームを掃除していたら、突然に煙が頭の中に充満してくる瞬間を感じ取りました。

「きた・・・これだ。」そう静かに流れ込む煙を認知しました。

当時の日記を振り返ると、その認知の瞬間とは、“まるで仙人が飛んでいるハエを箸で捕まえるような瞬間”だと表現されていて、なるほどなと思います。

いつも気がつくとそうなっている無意識の状態を、その時は意識的に目撃できたという感動的な体験でした。

ですが、認知したからといって、頭の中に流れ込んでくる煙を止めることはできず、一気に私の脳は煙に包み込まれたような感じがしました。

ただ、その瞬間を捉えたことによって、その後、私のイライラは減りました。

今思えば、頭の中に充満する煙で麻痺していく体の感覚を払拭するかのように、怒りを発散し、なんとかしようと身体がもがいていたのかもしれません。

この体験から、私の慢性的な頭痛が、私の精神にも影響を与えているだろうと推測されました。

そして、このことが、私のパターン化した頭痛を、なんとか解決したいという思いの原点ともなったのです。

10歳の私が車の中で体験したこと

その認知から、随分と時間が経ち、真剣に頭痛改善に取り込み出して2年ほど経った頃です。

確かに頭痛は徐々に改善していたのですが、回復率は、感覚的に言えば、ひどかった時の30〜40%ほどでした。

そんな時、ある個人セッションで、私は、自分の10歳の時の性的トラウマを扱うチャンスがやってきました。

このトラウマは、実は、30代のはじめ、インナーチャイルドセラピーを受けだして1年くらいした時に蘇ってきた記憶で、それまですっかり忘れていた出来事でした。

信頼していた4年生の頃の担任に、車の中で異性に向けられるような言葉の表現を受けて、私は恐怖で混乱し、パニックになりました。相手の教師は、車内でうつむいて黙り込む私に、謝ってきたような記憶があります。本人も間違ったことを言ってしまったのだと理解したのかもしれません。もはや、私が知るべきことでもないのですが。

それ以外のより深刻だと思われる体に受けた性的トラウマはセラピーで扱ってきたものの、その出来事は実際に体に受けたトラウマではなかったと思い込んでいて、そのことだけが、ポツンと記憶の中に取り残されてきたように思います。

思えば、他の性的トラウマの記憶は全て記憶していたにもかかわらず、その車内で生じた出来事だけ忘れていたということは、それは私にとってよりショックな出来事だったのでしょう。

インナーチャイルドセラピストであり、ファミリーコンステレーションのファシリテーター、そして、ソマティックエクスペリエンスのセラピストでもある経験深いセッションギバーは、私のこのトラウマを扱うための全ての必要条件を備えていて、深い信頼とともに、この繊細な記憶が扱えたことは、本当にありがたいことでした。

ソマティックエクスペリエンスの誘導の中で、私は、この時、恐怖で凍りつき、「どうして!どうして!どうして!どうして!」と、相手の教師に対して疑問をもち、どうすることもできず、その全ての疑問を内側に封じ込めたことがわかりました。

思えば、私の頭痛と肩こりは、4年生の頃からひどくなりましたが、このトラウマを受けた時期と重なります。

幼い私も、両親も、私の症状とこの出来事が結びついているなどとは、気がつくことはありませんでした。当然のことでしょう。

セッションを受けながら、イメージの中で、私は誰もいない家に戻り、脱力して畳に寝そべっていました。

畳からは、亡くなった祖母の匂いがしました。

実際のセッションルームのつるつるとした柔らかいプラスティック素材の床の上で、私の体は畳を感じながら、「おばあちゃんのエネルギーを感じる」と、私はか細い声で、セラピストに伝えました。

精神的に両親が不在だった私は、祖母がいつも綺麗に掃除をして整えてくれる古い家の中で、こうして安心感を感じていたのでしょう。

祖母への感謝とともに、私の中で鳴り響いていた「どうして!」という言葉は止み、ある気づきが湧いてきました。

それは、「長い間、私はこの出来事がなぜ起こったのか、その原因を考え続けてきたけれど、それは私の知ることではない。ただ、私は傷ついて、怖かった、それだけだったんだ。」ということでした。

それを伝えると、セラピストは言いました。

「それこそが、健全な境界線です。相手がしたことは相手のカルマで、あなたの知ることではないのです。怖かった自分を抱きしめるだけで十分ですよ。」

深い安堵ともに、私の内側に静寂がやってきました。

怒りのマグマ

人生の色を全て塗り替えしまうようなセッション体験の翌朝、緩みまくった体とともに、ダイナミック瞑想というOSHOのアクティブ瞑想に参加しました。

すると、カタルシスのステージで、私の中から、今まで感じたことのないような、怒りが放出し始めました。

それは、脳天から吹き出すようなマグマのようで、体は大きく躍動しながら、そこに抑圧はなく、喉は開き、声は爽快に響き渡り、腹の底から、大量の怒りが放出されたのでした。

私が、怒っていたのは、その時の教師だったのです。

「やめて!」「あっちへ行って!」「許せないよ!」

自分の尊厳を守るためのNOを、全身で表現したのでした。

当時抑圧してしまった怒りは、私の30年後の体で、しっかりとつけを取ることができたのです。

それから、すぐに私の慢性的な頭痛はなくなりました。

回復率は90%でした。

衝撃的なセラピー体験の後、寝込むほどの頭痛はなくなりましたが、それでも時々かすかにやってくる違和感を解消するために、ボディワークやセラピーを継続してきました。

それらは順調に効果があり、現在は、頭痛の回復率99%です。

それでも、1%残しているのは、私の体に完璧がないことを尊重したいからです。

また、頭痛はやってくるかもしれません。

ですが、もうしばらく寝込んでいないですし、体調は良好です。

本当に怒りたかった人に怒ることで、私に30年間続いた内攻化をやめることができました。

体は過去を記憶しますが、だからこそ何年経っても、過去の傷を癒すことは可能です。

ただただ、信じて諦めなかった私自身の情熱を、今讃えたいと思います。


私のインナーチャイルドへ。

頑張ったね。

あなたの我慢強さが、このことを克服できる力になったね。

ママは、あなたの力に、心の底から驚いています。

あなたをこれからも見守っていくから、その力を自分自身に使っていいよ。

あなたのことを、とても誇りに感じています。


ハートエデュケーションセンター
川村法子