サバイバー回復レポートVol.5 頭痛の原因<前編>
21.1.9
イントロダクション<後編・用語の理解>でも解説しているように、抑圧された感情は内攻化(アクティング・イン)することで、自分自身に向かい、頭痛や腰痛などの慢性化した体の不調から、命に関わる成人病などの深刻な症状、外的な理由としか思えない交通事故など、自分自身を痛めつける体験を引き起こすというのは、心理の世界においてはよく知られた事実です。この事実は、頭で理解するだけでは、「ああ、なるほど」という知識でしかないのですが、実際にセラピーや瞑想で自分が意識的にそれを知ると、人生がひっくり返ってしまうような衝撃を受けます。そして、確かにこの衝撃体験こそが、セラピーの1つの醍醐味的頂点であり、その極みにタッチすることなく、サバイバーが癒しを体験することは難しいのです。日常の小さな気づきは大切ですが、この極みに到達するための積み上げだと言ってもいいくらいです。
ライター
- 川村法子 2018年2月8日ハートエデュケーションセンター、Pranava Life代表。これまでに不登校、ひきこもり、心身症、アレルギーなどの身体の症状、依存症、DVや小児期の虐待(身体的、精神的、ネグレクト、性的)によるPTSD、関係性の問題、お金や仕事の問題などを、解決へと導いてきた…
抑圧された怒り
あらゆる瞑想がある中で、私を助けてくれたのは、OSHOのアクティブ瞑想と呼ばれるものでした。
サバイバーである私が、アクティブ瞑想とセラピーの2つの車輪を利用して、ここまで回復できたことは、本当にラッキーなことでした。
私を導いてくれたメンターたち、信頼するセラピスト、ファシリテーターたちに、感謝がつきません。
ACEスコア4というハイスコア群の私に、セラピーやカウンセリングだけでは到底無理だった癒しを、アクティブ瞑想は引き起こしてくれました。また、それがあったからこそ、セラピーも私の神経を深く癒してくれたのだと思います。
アクティブ瞑想の1つに、Awareness Understanding Meditation(アウェアネス・アンダスタンディング・メディテーション)というものがあります。通称AUM瞑想は、例のカルト宗教とは無関係です。誤解のないように。
この瞑想は、セラピーでもあると言われているようですが、セラピーと瞑想の2つを橋渡しするような強力な作用があります。
私はこの瞑想の大ファンでもありますが、ある時、ワークに入る前に、怒りを出す瞑想ステージのデモンストレーションをしてくれていたファシリテーターたちを見ながら、私が表現する怒りが、到底彼らの表現に及ばないことに気がつきました。
彼らは、まさに本能むき出しで、強烈な怒りを出しているのですが、私の声はしゃがれていて、腹に力は入らず、喉は詰まったまま、気が頭に登ってしまうような状態でした。
「どうしたらいいんだろう・・・。」そう思っても、努力で便秘症や慢性頭痛が治らないのと同じように、自分の体の反応を努力で変えることはできません。
「どうやら、まだ、私は本気の怒りを出せてないようだ。」そんな気づきを得ながらも、3年ほど、私は、そのことをどう扱っていいかわからず、時間は過ぎていきました。
日常的には、夫婦関係でもしっかりと怒りを表現していたつもりでしたし、そのことが、私にどんな深刻な影響をもたらしているかもわからないまま、セラピーを受けなければいけないという緊急性を感じてはいなかったのです。
怒りと私
「怒りと私」というタイトルで文章を書くとしたら、どれだけでも書けるほど、怒りは、私の人生を埋め尽くしてきました。
実際に、私が受けてきた性的被害は、私が怒りを持つことの正当性の証明のようでもありましたし、小学生の頃から夫婦関係の愚痴を母から毎日聞いてきたことは、複雑性PTSDの原因になったのは当然ながら、不在の父性に向けられる激しい怒りの土台にもなりました。
「男は悪い生き物なんだから、傷つけるくらいでちょうどいい」という私の考えに疑問が浮かんだのは、夫と出会った20代の半ば頃です。ですが、「もう、この考えは改めなくてはいけない」と気がついてからも、どうすればそれを止められるのかはわからないままでした。
ファミリーコンステレーション的には、それは、親から譲り受けた信念であり、その信念を持っていることで、親を助け、親から愛がもらえると思い込んでいたのでしょう。
インナーチャイルドワーク的に言えば、私は、怒ることで自分の孤独と絶望を隠し続けていたのでしょう。
そして、脳神経科学的に言えば、それは、もはや、私の神経系統に染み付いた、馴染みのある神経回路とホルモン分泌の反応であり、Fight or Flight反応(戦うか逃げるか反応)を繰り返し続ける、身体が記憶するトラウマだったのでしょう。
ですが、当時は何もわからないまま、私は「どうすればいいのか?」という問いと共に、様々なセラピーを渡り歩いていました。
そして、少しずつ道が拓けながらも、第二子の男の子を出産したことで、さらに私のその信念は見過ごせないものとなっていきました。
「男性を許さなければ、この先にはいけない」という気持ちが、可愛い我が子を抱きながら、差し迫ったものとして感じられました。
セラピーの恩恵
前後しますが、そんな思いとともに、アクティブ瞑想や女性性の癒し、ボディワークを受け、トレーニングを重ねてきました。
あらゆるワークが、多角的に作用し、特別にやり方を変えるわけでもなく、パートナーシップも良好になり、体が健康になっていきました。
最初の妊娠出産の時、私は産後鬱になり、体力もなく、夕方になるとキッチンに立っていられなくなるほど、体力を消耗していました。
ですが、7年かけて、2人目、3人目と出産しながら、高齢になっていくにも関わらず、キッチンに座り込むこともなくなり、むしろとても健康になっていったのです。
「産む度に元気になるね!」と夫の母が言った時に、「確かに!」と納得したのですが、それがセラピーと瞑想のおかげだというのは明らかでした。
風邪もひきにくくなり、便秘もなくなり、冷え性もなくなり、病院にいく機会はほとんどなくなりました。
そして、最後に残った気になる症状は、頭痛でした。
ハートエデュケーションセンター
川村法子
続く