ACEスコアについて
ACEとは
Adverse Childhood Experiencesの略で、逆境的小児期体験と訳され、その頭文字のACE(エイス)、または、ACEs(エイシーズ)として知られています。スコアを知ることで、自分自身の心と体、神経システムの健康度がわかります。
小児期トラウマが影響するもの
うつやパニック障害、生きづらさなどに小児期トラウマが関係しているのは当然ながら、小児期トラウマを持つ親の子が不登校や発達性トラウマ障がいを起こしがちであることが、少しずつわかってきています。自分自身が健康な毎日を生きるために、また、適切な子育てによって、子どもたちの成長を促すために、ACEスコアをチェックして、自身のトラウマ指数と、気をつけるべきことを知っておきましょう。
※8の母親への暴力とは、母親が受けている暴力の目撃を意味します。
※詳細はこのページをスクロールしてご覧ください。
ACEスコアチェック
18歳になる前に以下のような経験があるでしょうか。1つの質問につきイエスなら1点としてスコアを出しましょう。
① 親か同居している大人から頻繁に、または日常的に、罵倒、侮辱、悪口、屈辱を受けていたか?もしくは危害が及ぶかもしれないという恐怖を与えられていたか? |
② 親か同居している大人から頻繁に、または日常的に押されたり、つかまれたり、叩かれたり、何かを投げつけられていたか?もしくは跡が残ったり傷ついたりするほど強く殴られたことはあるか? |
③ 大人か、少なくとも5歳以上年上の人間から性的に触られたり撫でられたりしたか、無理やり相手の体に触らされたことがあるか?もしくは触られそうになったり、不適切に触られたり、性的に虐待されたことがあるか? |
④ 頻繁に、または日常的に、家族の誰からも愛されていない、あるいは自分が大事で特別な存在だと思われていないと感じていたか?もしくは家族が互いに関心がない、親しみを感じていない、助け合っていないと感じていたか? |
⑤ 頻繁に、または日常的に、食事が十分ではない、汚れた服を着なければならない、自分を守ってくれる人がいないと感じていたか?もしくは親のアルコールか薬物依存により、面倒を見てもらえなかったり、必要なときに病院へ連れていってもらえなかったりしたと感じていたか? |
⑥ 離婚や別居、その他の理由によって実の親と別れた経験があるか? |
⑦ 母親(継母)は頻繁に、または日常的につかまれたり、叩かれたり、物を投げつけられたりしていたか?時々、頻繁に、または日常的に蹴られたり、噛み付かれたり、拳や物で殴られたりしていたか?もしくは繰り返し数分間に渡って殴られたり、銃やナイフで脅されたりしていたか? |
⑧ 酒癖が悪い人、アルコール依存症者、または薬物を乱用している人と同居していたか? |
⑨ 家族にうつ病の人、精神疾患を抱えた人、自殺未遂を起こした人がいたか? |
⑩ 家族に刑務所に収監された人がいたか? |
ACEスコアからわかっていること
次の結果は、アメリカ人医師ヴィンセント・J・フェリッティト、ロバート・アンダによって、1990年代に発表された研究結果です。詳細は以下の書籍に掲載されています。
- アメリカで行われた実験結果によると、被験者の約3分の2(64%)が1つ以上の項目で「はい」と答えた。
- スコアが2以上の人は全体の40% 、4以上は12.5%。
- スコアが0だった参加者は、全体の3分の1。
- スコア4の人は0の人に比べてがんと診断される確率は2倍。
- スコアが1点増えるごとに成人後に自己免疫疾患で入院するケースは20%上昇。
- スコア4の人がうつ病となる可能性はゼロの人の4.6倍。
- スコア6以上の人は寿命がおよそ20年短かった。
- スコア7以上の人は飲酒も喫煙もせず肥満や糖尿病でもなくコレステロール値が低くても心臓病のリスクがゼロの人の3.6倍。
- 子ども時代に困難な環境に身を置くだけで、成人期に慢性疲労症候群を患う確率が6倍に増える。 親を失った子どものうつ病のリスクが3倍、両親が離婚した子どもは一生のうちに脳卒中を起こす確率が2倍。
- スコアが3では30%、4では50%近くの人が慢性的なうつ病は患っていた。
- スコアが0で自殺未遂を起こした人は1%に過ぎないが、スコア4以上では5人に1人が経験している。
- スコアが4以上の場合、0の人に比べて自殺未遂の件数は12.2倍。
- 16歳以前に深刻なトラウマを経験した子供は、統合失調になる確率は3倍に跳ね上がる。
- 小児期に性的虐待の被害を受けると、成人後に子宮筋腫になる確率が36%高くなる。
- スコアが1で慢性うつ病にかかる男性の割合は10%で、女性は18%。同様にスコアが4以上だと、成人後にうつ病発生する男性は33%、女性の場合は約60%までに跳ね上がる。
- うつ病の母親に育てられた子どもは、大人になってから慢性疼痛に苦しむ可能性が高い。
- 小児期にひどい虐待を受けた女性ほど、うつ病の発症率が高い。中程度から重度の虐待経験を持つ女性が44%、これに対して男性は35%に止まった。1番の理由は、女性の方が子どもの頃に性的虐待を受けた割合だ。一方男性は身体的虐待の方が多かった。
※その他の参考図書はHE図書室をご覧ください。
ACEスコアが示す結果
スコアが低ければ低いほど、小児期トラウマ少ないと言えます。ですが、トラウマによって認知能力が低下している場合、過去の事実を適切に認知できず、スコアが低く出る場合があります(例えば、親からの虐待を躾であると主張し続けるなど。)ので、スコアはあくまでも見立てのガイドラインであり、一度出したからといって、スコアを決めるけることはできません。生きづらさを抱えているにもかかわらず、スコアが低い人が、適切なセラピーやヒーリングを継続的に受けながら認知能力を取り戻すことで、ようやく過去の虐待を認知し、高いスコアになることは珍しくありません。
スコア0:全体の約30%
| 生きやすい人は・・・ 愛に溢れた両親に育てられ、心身ともに健康で、前向きでいられるとしたら、現状セラピーやカウセリングの必要性はないでしょう。生きがいや天職の発見、自分らしさの発見のために、コーチングや心理の学びを通して、心の仕組みを理解してみるといいでしょう。
| 生きづらい人は・・・ 誕生時のトラウマ(バーストラウマ)や0歳〜1歳頃の記憶にないトラウマが影響している可能性もあります。また、幼少期と現在に接点を感じられていない可能性もあります。自分や子どもに心身の症状が現れていて対応しきれないでいるとしたら、自身のセラピーは必須ですが、焦って選択は禁物です。過去の事実の認知ができていない場合は、セラピーを受けるタイミングではない可能性もあります。自分のタイミングがあることを信頼してください。
スコア1〜3:全体の約57%
| 生きやすい人は・・・ 過去の出来事をあなたなりに整理して、ここまで頑張ってきたのかもしれません。あなたを助けてくれた仲間や家族がいたのかもしれません。心と体のケアを継続して、健康維持に努めましょう。セラピー、カウンセリング、コーチングは、人生をより豊かにしてくれます。スコア3の場合、どんなに生きやすいと思っていても、健康維持のために、セラピーやカウンセリングは必須です。コーチングはセラピーやカウンセリングによって、認知能力が戻ってから受講することを勧めます。
| 生きづらい人は・・・ 過去と現在に、微かなつながりを感じていますが、それをどのように整理すべきかわからないのかもしれません。また「そのくらいのことは誰にでも起こりうる」と問題を低く見積もっている可能性もあります。セラピーやカウンセリングを通して認知能力が上がることで、さらにスコアが上がる可能性もありますが、それは悪いことではありません。あなたの知らない家系の問題がある可能性もあります。実際には問題を抱えている両親を無理やり肯定して、子どもなのに助けてきた可能性もあります。家族関係に問題があったとしても、それは、決してあなたの価値を貶めるものではないことを理解してください。真実に向き合おうとする勇気と信頼が、あなたの現実を真に健康にします。
スコア4以上:全体の約13%
| 生きやすい人は・・・ このレベルのスコアの人が生きやすさを手に入れるためには、長期間にわたるセラピーやカウンセリングが必須です。もし、それらを受けてきていないまま「生きやすい」と思っているなら、それはおそらく間違った認知です。あなたは、自分の痛みを放置したまま、何らかの中毒を持っているはずです。アルコール、ギャンブル、タバコ、ゲーム、インターネット、買い物、恋愛、仕事など、中毒は重篤なものから軽度のものまで様々ですが、原因は同じで、それは、過去の痛みを隠すために刺激と快楽を欲していることによる無意識の衝動です。中毒は自分も家族も傷つけます。あなたは、自分や他人を傷つけてしまうのを止められなかったり、常に疲れやすさや不調を感じているかもしれません。他人のせいや運、自分の性格のせいにせず、セラピーやカウンセリングで自分を大事にすることを学びましょう。あなたは、傷つきながら生きてきたサバイバーなのです。
| 生きづらい人は・・・ すでにあなたの体にも人生にも、たくさんの症状や痛みが生じているはずです。子どもたちにも何らかの症状が生じている可能性があります。次のことが、あなたやあなたの子どもたちに生じていたら、それらを軽く見積もらないでください(アレルギー、喘息、頭痛、皮膚疾患、発達障がい、学習障害、身体的疾患、精神的疾患、不登校、ひきこもり、中毒、DV加害&被害、性的暴力加害&被害、いじめ加害&被害、事件、事故)。人生は必ず良くなることを信頼してください。成功哲学や占いは一時的にその場をしのげても、今のあなたを本当の意味で助けることはできません。ニューロン、シナプス、自律神経、ホルモンに機能不全が生じているので、セラピーやカウンセリングによるトラウマ治癒が必要です。あなたとあなたの愛する人たちのために、早急な取り組みをおすすめします。